忘れ物や落とし物を持ち帰った行為の罪責

 客が店に財布を置き忘れたり落としたりしたとき、その財布を、中に入っている現金やキャッシュカードを自分で使う目的で持ち帰ったら、何らかの罪に問われるでしょうか。

 この場合、忘れ物や落とし物になっている財布の占有をどう判断すべきかが問題になります。

 占有が認められると窃盗罪が、認められない場合は占有離脱物横領罪が成立する可能性があります。

 占有があると言うためには、主観的な要素である、物を事実上支配、管理しようという意欲又は意思と、客観的な要素である物を支配する事実が必要とされます。

 そして、支配の事実については、必ずしも現実の所持を必要とはしませんが、単純に物理的に判断されるものではなく、過去の裁判例から検討すると、支配の事実は、①物自体の特性、②占有者の支配の意思の強弱、③距離等による客観的・物理的な支配関係の強弱により判断されるものとされています。

 そうすると、物を置き忘れたり落としたりしたときは、物の持ち主に支配が認められる場合は限定されるものとされています。

 過去の裁判例によれば、バスを待っている行列の中でカメラを置き忘れた人が、行列が進むにつれて約20メートル離れたところまで進んで気づき、引き返すまでの5分間については占有が認められています。

 他方、大規模商業施設の6階のベンチの上に財布を置き忘れたまま地下1階に移動してしまい、財布だけが約10分間放置されていた場合については占有が否定されています。

 そうすると、財布を忘れたり落としたりした場合の持ち主の占有は、持ち主が置いたままにして放置した時間やその間の持ち主の移動距離等により左右されると言えそうです。

 なお、持ち主の占有が否定されたとしても、持ち主が忘れたり落としたりした財布を店のオーナーが預かって管理していたと認められるような場合、その財布を持ち帰ると、店のオーナーの占有を害したとして、窃盗罪が成立する可能性があります。

 

 大阪の事務所で弁護士をするようになり、早くも1年半が過ぎ、2回目の年末を迎えようとしています。

 今年はどのような1年だったでしょうか。

 来年もよろしくお願いいたします。

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