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不起訴処分と起訴猶予について

カテゴリ: その他

 刑事弁護の依頼を受けていた刑事事件の被疑者が不起訴処分になりました。

 不起訴処分になると、検察官から被疑者が不起訴処分になったという内容の告知書を受け取ることができるため、被疑者を担当していた検察官に連絡して、被疑者の不起訴処分の告知書の発行を依頼しました。

 すると、数日後、検察官から、検察庁の書式による、不起訴処分告知書が送られ、被疑者が不起訴処分になったことを、書面でも確認することができました。

 被疑者が不起訴処分になったことにより、弁護士として依頼を受けた責任を果たすことができたと思っています。

 ところで、不起訴処分とは、検察官が行う処分のうち、被疑者を起訴しないという処分を言います。

 そして、不起訴処分になる理由の多くは、起訴猶予になります。

 起訴猶予というのは、犯罪を認定する事実が明らかな場合において、被疑者の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により、被疑者を起訴する必要がないと検察官が判断した場合のことを言います。

 検察官が起訴猶予にするかどうかについては、そのような被疑者の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況等をよく検討して、判断することになります。

 検察官が起訴猶予の判断をするに当たって、犯罪後の情況に関する事柄については、被疑者の反省の有無、謝罪や被害回復の努力、又は逃亡や証拠隠滅の行動、環境の変化、社会的制裁の有無、身柄引受人その他の将来被疑者を監督する者や保護者の有無などの、環境調整の可能性の有無のほか、被害弁償の有無や示談の成否、被害感情等が問題となります。

 今回の事件では、大阪の事務所から出て被害者と会うなどして示談交渉をして、被害者との間で示談を取りまとめることができましたが、示談の成否は、先ほど述べた事情の中では犯罪後の情況に関係することになります。

 今回の事件に限りませんが、被害者がいる犯罪では、被害者との示談は、検察官が起訴猶予するかどうかを判断する際に、重視されるところであり、刑事弁護でも力が入れられているところです。

 被害者との示談交渉も含めて、刑事事件の弁護について気になる点がありましたら、お気軽にご相談ください。

示談交渉を持ち掛けられたら

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 被害者との示談交渉は、刑事弁護人の重要な役割の一つです。

 刑事弁護人の立場からすると、被害者との示談をまとめることで、被疑者の処分を免れ、又は軽減させることを目的としており、そのために被害者に大阪の事務所まで来てもらったり、被害者の許に伺ったりして示談に関するお話しをすることになります。

一方、被害者の立場からすると、これまで被害に遭わせた犯人を許せないと思っていたところ、弁護士から示談してほしい、犯人を許してほしいなどと持ち掛けられるのですから、どうすればいいのやら困惑することもあると思います。

 実際に、私も、検察官だった時、捜査や公判を担当していた被害者から、弁護士から示談を持ち掛けられたけれど、どうすればよいかなどと相談を受けたことが何度もありました。

 その際、私は、検察官という公務員の立場で示談を勧めたり勧めなかったりすれば中立性を害してしまうので、示談を勧めたり勧めなかったりするような回答はしませんでした。

 もっとも、被害者が示談に応じれば受け取る示談金は、民事事件でいえば不法行為に基づく損害賠償に当たるものですので、被害者が示談に応じた上で示談金を受け取ることは当然のことであり、問題がないことはお話ししていました。

 そのような話は、私に限らず、多くの検察官がお話ししていたと思います。

 また、私がそのようにお話しすると、多くの被害者から、示談に応じれば犯人に有利になってしまうのではないか、犯人が不起訴になってしまうのではないか、などとご質問を受けることがありました。

 確かに、検察官の立場からしても、示談がまとまることで被疑者が不起訴になるかどうかはともかく、被害者に謝罪も弁償もせずに放置しているよりも、示談により謝罪や弁償をする方が、被疑者には有利になることは、そのとおりです。

 私は、被害者に対して、示談がまとまることで被疑者に有利になる可能性があること、その上で示談交渉に応じるかどうかは自由であることをお話ししていました。

 では、弁護士の立場だと、被害者から示談交渉に応じるべきか相談を受けたらどう答えるべきでしょうか。

 通常は、被害者のお考えやお気持ちをよく伺って、それに沿ったお答えをすることになるのでしょうが、私なら、示談交渉に応じる方向でお答えするのだろうと思います。

 なぜなら、被疑者が被害者との示談をまとめようとするのは、被疑者の処分を免れ、又は軽減させることを目的としており、言い換えると、被疑者は処分が決まると示談金を支払おうとすることは、まずありません。

 処分が決まった後で、被害者が被疑者に民事の損害賠償請求をすればいいのではないか、とも思われますが、示談交渉と比べると、時間も労力も使いますし、被疑者が損害賠償金を支払うことも確実ではありません。

 そうすると、被疑者が被害者に示談金を支払う姿勢を示しているうちに、示談交渉に応じる方がいいということなります。

勾留中の被告人との面会

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  新しい年を迎えて早々、大きな災害、事故、事件が続き、不安なお気持ちになられている方もいらっしゃるかと思います。

 皆様の今年一年の安寧とご多幸をお祈り申し上げます。

 ところで、私が弁護士として現在担当する事件に、留置施設に勾留されている被告人の私選弁護人として、刑事弁護をするものもあります。

 その場合、弁護人は、勾留中の被告人と、留置施設の接見室で、原則としていつでも、職員の立ち合いがない状態で、面会することができます。

 その際、弁護人は、被告人に刑事手続の流れを説明し、取調べの内容を聴いて今後の取調べへの対応についてアドバイスをするなどします。

 また、弁護人は、その際、被告人に家族や同僚からのメッセージを伝えたり、被告人から家族や同僚へのメッセージを受け取ったりもしています。

 一方、弁護人以外の人が勾留中の被告人と面会する場合、弁護人とは異なり、多くの制限があります。

 例えば、大阪府警の管理している留置施設だと、一般的には、留置施設で面会できる時間は平日の朝から昼頃、昼休みをはさんで昼頃から夕方頃までの間の20分間程度の時間に限定されており、休日は面会することができません。

 また、被告人と面会することができる人も、1日1組に限定されています。

 そして、被告人と面会する時には、留置施設の職員の立ち会いがあります。

 さらに、被告人に対し、接見禁止の処分がなされた場合、弁護人以外の人は被告人と面会することができません。

 なお、大阪府警察ホームページには、弁護人以外の人が留置施設で面会する時の遵守事項として、以下の事項が挙げられています。

 ● あらかじめ告げられた時間内に面会を終了すること

 ● 録音機、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、パーソナルコンピュータ等を使用してはなら

  ないこと

 ● あらかじめ申し出て承認を受けた場合を除き、外国語、隠語等を使用しないこと

 ● 必要がある場合には、職員が着衣若しくは携帯品を検査し、又は携帯品を一時預かること

  があること

 ● 留置施設の職員の指示に従うこと

 ● 遵守事項に違反する場合には、面会を一時停止し、又は終了することがあること

 その他、被告人や留置施設の事情で、被告人と面会ができなかったり、面会まで時間がかかったりすることもあります。

 ですので、被告人と面会する前に、あらかじめ弁護人に相談をするほか、留置施設のある警察署に問い合わせをしたりして、被告人との面会について時間やルール等を事前に確認しておくことをお勧めします。

刑事事件の弁護士費用特約について

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 刑事事件やその他の事件について、大阪の事務所でご相談を受けるほか、電話でご相談を受けて弁護活動をする日々を送っています。

 その際、自動車で交通事故を起こしたことについてご相談を受けていた方から、弁護士が刑事弁護を受任した後に刑事弁護の費用を支払う際、加入している損害保険の弁護士費用特約を利用し、保険金で支払いたいというお話を受けました。

 損害保険に加入しておけば、もし交通事故を起こしてしまった場合に、事故の被害者に支払う損害賠償を、保険でカバーすることができます。

 その損害保険に、刑事弁護の費用についてもカバーすることができるという弁護士費用特約があることをよく知らなかったので、インターネットを検索するほか、損害保険を実際に取り扱う損害保険会社に問い合わせるなどして、弁護士費用特約について調べてみることにしました。

 調べてみると、確かに、損害保険会社が販売する損害保険には、弁護士費用特約が付されているものがあります。

 そして、弁護士費用特約の中には、交通事故によって被保険者がけがをしたり、自身の自動車や家屋等を壊されたりして被害者になった場合に、事故の相手に対して損害賠償請求をするために支出された弁護士費用や、法律相談の費用等を保険金として支払うものがあります。

 それだけではなく、交通事故によって被保険者が他人にけが等をさせて加害者になった場合にも、刑事事件の対応を行うために支出された弁護士費用や法律相談の費用等を保険金として支払うという特約のある保険を、少数ですが見つけることができました。

 今回のご相談者さんが加入されている損害保険の弁護士費用特約でも、刑事事件の弁護士費用について、保険金として支払いを受けることができそうです。

 とはいえ、飲酒運転や無免許運転をして事故を起こした場合や、わざと事故を起こした場合など、弁護士費用特約の適用はなく、刑事弁護の弁護士費用が保険金として支払われない場合もあるようです。

 また、そもそも交通事故によって加害者になった場合の特約ですので、その他の罪を犯した場合には、当然ながら弁護士費用の特約はないことになります。

 そうすると、刑事弁護の費用を保険金で支払いたいというご相談を受けるのは、交通事故を起こした加害者からの場合にとどまることになるのでしょう。

教師による体罰と懲戒

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 ここ最近、弁護士が学校内で起こる様々な問題を解決するため、スクールロイヤー制度が設けられるところが増えてきています。

 大阪府でも大阪弁護士会と連携してスクールロイヤー制度が導入されており、子どもに関する問題に詳しい大阪弁護士会所属の弁護士が、スクールロイヤーとして登録されているとのことです。

 ところで、学校内で起こる問題の一つとして、教師による児童・生徒に対する体罰の問題があります。

 学校教育法11条は、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、…児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えてはならない。」と規定して、教師による懲戒を認める一方、体罰を禁止しています。

 文部科学省は、平成25年3月13日付けで「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」という通知を発しています。

 同通知は、体罰について、児童・生徒の心身に深刻な悪影響を与え、教員等及び学校への信頼を失墜させる行為であること、体罰により正常な倫理観を養うことはできず、むしろ児童・生徒に力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為などの連鎖を生むおそれがあることを挙げて、児童・生徒への指導に当たり、いかなる場合も体罰を行ってはならない、としています。

 一方、学校教育法11条は、教師が懲戒を加えることを認めています。

 そこで、懲戒と体罰との区別が問題となります。

 この点、文部科学省は、前記通知等により、教師が児童・生徒に対して行った懲戒行為が体罰に当たるかどうかは、児童・生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考えて、個々の事案ごとに判断する必要があるとしています。

 その上で、①殴る、蹴る、突き飛ばす、物を投げつけるなど、身体に対する侵害を内容とするもののほか、②長時間にわたり正座させる、別室に留め置いてトイレに出ることも許さないなど、児童・生徒に肉体的苦痛を与えるようなものに当たるものについて、体罰に当たるとしています。

 他方、文部科学省は、放課後に教室に居残りさせる、授業中に教室内で起立させる、課題や清掃活動を課す、当番を多く割り当てる、立ち歩きの多い児童生徒を叱って着席させる、練習に遅刻した生徒を試合に出さずに見学させるなどの行為は、肉体的苦痛を伴わない限り、懲戒として認められるとしています。

 そうすると、教師が児童・生徒に対して殴る、蹴る、長時間にわたり正座させる、別室に留め置いて外に出さない行為等について、学校教育法で禁止されている体罰に当たるうることになります。

 そのような体罰に当たりうる行為は、傷害罪や暴行罪、監禁罪等の構成要件に該当しますので、教師には刑事責任が問われる可能性があります。

 もっとも、教師が児童・生徒に対してそのような体罰に当たりうる行為を加えたとしても、場合によっては教師に刑事責任が問われない可能性があります。

 例えば、児童・生徒が教師の指導に反抗して教師の足を蹴ってきたので、教師がその背後に回ってその身体をきつく押さえた場合のように、教師が防衛のためにしてやむを得ずしたような場合には、正当防衛が認められ、教師は刑事責任を免れる可能性があります。

 また、他の児童・生徒を押さえつけて殴っていた児童・生徒の身体をつかんで引き離した場合のように、他の児童・生徒に対する暴力行為を制止するような場合にも、正当防衛や正当行為が認められ、教師は刑事責任を免れる可能性があります。

 文部科学省も、前記通知により、先ほど挙げたような場合には体罰に当たらず、正当防衛又は正当行為として刑事責任を免れうるとしています。

在宅事件のご相談

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 おかげさまで、大阪で弁護士になってから、刑事事件についてのご相談を受ける機会があります。

 ご相談の内容は、警察に呼ばれたり捕まったりしていないが、自分のしたことが犯罪に当たるかどうか気になるというものや、知り合いが警察に捕まってしまったがどうしたらよいかというもののほか、自身が警察に呼ばれて取調べを受け、身柄拘束されずに帰されたが、今後どうしたらよいかというものもあります。

 事件の被疑者が警察に呼ばれて取調べを受けたが身柄拘束されていないものは、在宅事件と呼ばれます。

 一方、被疑者が逮捕され、身柄拘束された事件のことは身柄事件と呼ばれます。

 刑事訴訟法によれば、身柄事件では、被疑者は逮捕される際、被疑事実の要旨が記載された逮捕状を示されます。

 また、勾留された際に出された勾留状にも被疑事実の要旨が記載されますので、弁護士は、逮捕状に記載された被疑事実を被疑者に確認したり、勾留状の謄本を入手して被疑事実を確認したりして、事件の内容を把握することになります。

 一方、在宅事件では、逮捕状も勾留状もありません。

 ですので、弁護士は、事件の内容を被疑者の話す内容から判断することが必要になります。

 例えば、被疑者が話す事件に至る経緯や事件の経過を聴くことによって、被疑者が事件の内容についてどのようにとらえているかがわかります。

 また、私の前職が検察官だったこともあり、被疑者から、警察からどのような質問を受けたか、差押えを受けたものはあるか、警察官と一緒に現場や関係場所に行ったかなど、警察に呼ばれて取調べを受けたときに体験した内容を聴くことで、警察がその事件をどのようにとらえているか、その事件の捜査がどの程度まで進んでいるかなどがわかります。

 さらに、私の前職が検察官だったこともあり、先ほどまでお話しした事情のほか、被疑者の前科前歴関係や家族、仕事等の、被疑者の身上関係等も確認することで、被疑者が受けるだろう刑事処分も、ある程度予想することができます。

 弁護士は、被疑者からご相談を受けた際は、被疑者からそれらの事情をよく聞いた上、事件の概要や今後予想される捜査の流れ、被疑者が受けるだろう刑事処分等について判断します。

 それを踏まえて、弁護士は、警察官や検察官による取調べの対応、被害者との示談など、今後起こりうることについて広くアドバイスをします。

 また、その中でご依頼を受けることになれば、弁護人に就任し、被疑者のために弁護活動を開始することになります。

 ご自身はもちろん、身の回りで、警察に呼ばれて取調べを受けて、今後どうなるのか、どうすればよいのかなどと不安を感じられている方がおられたら、一度、弁護士へご相談されることをおすすめします。

飲酒による交通事故の刑事責任

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 飲酒した後で自動車を運転して人身事故を起こした場合、従来は、酒気帯び運転という道路交通法違反のほか、業務上過失致死傷、その後改正されて現在は過失運転致死傷の刑事責任に問われていました。

 しかし、飲酒による人身事故が悪質な犯罪であるという社会的な認識の高まりもあって、ここ最近、刑法や道路交通法の法改正が相次いでおり、現在はより重い危険運転致死傷罪に問われる可能性もあります。

 危険運転致死傷罪は、故意に危険な運転行為を行った結果として人を死傷させた行為について、暴行により人を死傷させる傷害罪や傷害致死罪に準じ、故意犯として処罰するものです。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条1号は、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」によって人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処すると、危険運転致死傷罪を規定しており、法定刑については、過失運転致死傷(7年以下の懲役、禁錮又は100万円以下の罰金)と比較して相当重くなっています。

  「アルコール…の影響により正常な運転が困難な状態」というのは、酒類の影響により、道路及び交通状況等に応じた的確な運転操作を行うことが困難な心身の状態をいいます。

例えば、飲酒した影響で、思ったとおりにハンドルやブレーキ等を操作することや、前方を注視してそこにある危険を的確に把握し対処することが、現に困難な状態が、そのような状態に当たるとされています。

 また、同法3条1項は、危険運転致死傷罪の別類型として、「アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障を生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する」と規定しており、法定刑についても、過失運転致死傷と比較して相当重くなっています。

 「アルコール…の影響により、その走行中に正常な運転に支障を生じるおそれがある状態」とは、酒類の影響により、自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力又は操作能力が相当程度減退している状態、あるいは、そのような状態になり得る具体的なおそれがある状態をいいます。

 例えば、道路交通法の酒気帯び運転に該当する程度のアルコールを身体に保有している状態であれば、通常はそのような状態に当たるとされています。

 また、同法3条1項の危険運転致死傷罪の故意として、「アルコール…の影響により、その走行中に正常な運転に支障を生じるおそれがある状態で、自動車を運転」することの認識が必要とされています。

 すなわち、身体にアルコール等を保有していることの認識と、その影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態にあることの認識を要し、かつ、それで足りるとされています。

 具体的には、客観的に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態にあったと認められる限り、酒気帯び運転に該当する程度のアルコール等を身体に保有していることを認識していれば、危険運転致死傷罪の故意を認めることに十分であるとされています。

 そうすると、道路交通法の酒気帯び運転に該当する程度のアルコールを身体に保有している状態で、その状態にあることを認識して自動車を運転した場合、すなわち、それなりに飲酒した後で自動車を運転した場合、人身事故を起こすと、法定刑が相当重い、同法3条1項の危険運転致死傷罪によって処罰される可能性があるということになります。

 どのような犯罪が成立するにしても、飲酒して自動車を運転し、人身事故を起こすことは処罰の対象になります。

 自分は人身事故を起こすわけがないと信じていたとしても、自動車の飲酒運転は絶対にしないようにしましょう。

 また、もし自動車の飲酒運転をして人身事故を起こした場合、重い刑罰を受ける可能性があるほか、民事の損害賠償の問題にもなりますので、早めにお近くの弁護士にご相談されることをおすすめします。

 大阪で刑事事件について弁護士をお探しの方はこちらをご覧ください。

性犯罪関係の刑法等の改正について

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 令和5年の通常国会で、性犯罪に関する刑法その他の法律が改正され、令和5年7月13日から施行されていることは、報道もされており、ご存じの方もいらっしゃると思います。

 法務省がホームページで改正法の概要等を説明していますので、その内容を簡単に説明しますと、これまで強制性交等罪や強制わいせつ罪と規定されていたものが不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に名前が変わりました。

 また、それぞれの構成要件についても、これまで規定されていた

① 暴行又は脅迫 に加えて、

② 心身の障害

③ アルコール又は薬物の影響

④ 睡眠その他意識不明瞭な状態

⑤ 性的行為がされようとしていることに気づいてから、性的行為がされるまでの間に、その性的行為について自由な意思決定をするための時間にゆとりがない場合

⑥ 予想と異なる事態との直面に起因した恐怖や驚愕

⑦ 虐待による無力感や恐怖心などの心理的反応

⑧ 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮

のいずれかを原因として、性的行為に同意しない意思を形成し、表明し又はその意思どおりにすることを困難な状態にさせ、あるいは相手がそのような状態にあることに乗じて、性交等やわいせつな行為に及んだ場合、婚姻関係の有無にかかわらず処罰の対象になり、処罰の対象がより明確になりました。

 また、わいせつな行為ではないと誤信させるほか、人違いをさせること、又は相手がそのような誤信をしていることに乗じて性交等やわいせつな行為に及んだ場合も処罰の対象となり、その面でも処罰の対象がより明確になりました。

 そして、先ほどの構成要件に当てはまらない場合でも、相手が13歳未満である場合や、相手が13歳以上16歳未満であって行為者が5年以上年長である場合、性交等やわいせつな行為に及ぶと処罰の対象になります。

 なお、公訴時効についても改正されており、不同意性交等致傷罪の他、不同意性交等罪、不同意わいせつ罪の公訴時効が改正前から5年ずつ延長され、それぞれ20年、15年、12年になりました。

 また、被害者が18歳未満である場合は、被害者が18歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間が公訴時効期間とされます。

 例えば、当時10歳の被害者が不同意性交等の被害に遭った場合、公訴時効の完成は、不同意性交等罪の15年に、被害者が18歳になるまでの8年間が上乗せされることになるので、公訴時効は被害者が33歳に達する日まで完成しないことになります。

 ところで、これまで他人の下着姿を盗撮した場合、大阪府ならば大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例、他の都道府県でもいわゆる迷惑防止条例が適用されていました。

 また、18歳未満の児童に対する盗撮の場合、児童買春等処罰法が規定するひそかに児童ポルノを製造する罪等が適用されていました。

 しかし、迷惑防止条例は都道府県ごとに規定が異なる上、児童ポルノ製造罪の保護の対象も18歳未満の児童に限定されており、これらの条例や法律が適用されない盗撮の事例もあり得ます。

 そこで、今回、これまで適用されなかった事例も含め、盗撮行為やそれに関連する行為を処罰するため、性的姿態撮影等処罰法が制定されました。

 この法律では、

① 他人の性的な姿を盗撮するなど、一定の態様、方法で撮影する行為

② ①の撮影行為により生まれた記録の提供や公然陳列

③ ①の撮影行為により生まれた記録の、提供や公然陳列目的での保管

④ 他人の性的な姿を、一定の態様、方法で、ライブストリーミングによる不特定、多数の者への影像の配信

⑤ ④の配信行為により送信された影像の記録

を処罰対象としています。

 今回の刑法等の改正は、性犯罪に関して新たな規定が定められるなどしており、実務的にも影響が大きいと思われます。

 また、今後もさらなる法改正が予想されるところでもあり、引き続き動向を追っていきたいと考えています。

交通違反事件の弁護活動

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 自動車の交通違反事件の公判弁護を受任することになり、現在、被告人となった依頼者さんと打合せをしているところです。

 自動車の交通違反といえば、主に速度違反、無免許運転、酒気帯び運転、無車検・無保険車の運転等が挙げられますが、その際に人身事故を起こさない限りは、被害者に当たる人がいない犯罪ではあります。

 だからといって、弁護人が何も弁護活動をしないかといえばそうではありません。

 自動車の交通違反で公判請求を受ける場合というのは、それ以前にも自動車を運転して交通違反を繰り返し、略式命令を受けていたような場合もままあります。

 ですので、弁護人の立場からすると、被告人が、今後は二度と速度違反や無免許運転のような交通違反を繰り返さないことを、裁判所に対して積極的にアピールすることが必要になります。

 例えば、被告人質問で、被告人に今後は二度と自動車を運転しないことを誓約してもらうこと、被告人が自動車を所有していたらその自動車を業者に買い取ってもらうこと、被告人の家族に証人として出廷してもらい、自動車のエンジンキーを厳重に管理して、被告人に二度と自動車を運転させないことを約束してもらうことなど、今後、被告人が二度と交通違反をしないための実効的な対策を立てていることをアピールする必要があります。

 その反面、被告人自身が、交通違反をしているときに偶然に警察官に見つかっただけで運が悪かった、今後交通違反を起こしてもそれほど警察官には見つからないだろう、周りも交通違反をしているのに自分だけ裁判を受けなければならないのはなぜか、弁護人や検察官、裁判官や警察官に話を合わせてやり過ごしておこうなどと考えていれば、二度と交通違反を起こさないと言っても、被告人の姿勢が疑われるでしょう。

 また、被告人がそのような姿勢だと、弁護人としても、被告人が二度と交通違反を繰り返すことはない、と自信をもってアピールすることができなくなります。

 そこで、私は、打合せの時、依頼者さんに対して、二度と交通違反を起こさないことを真剣に考えてもらうため、そもそも交通ルールが法律で定められている理由について、ご自身の言葉で考えてもらうことにしました。

 依頼者さんに自分の言葉で答えることができるようになってもらえれば、今後は交通ルールを守って交通違反をしないようにしようと、ご自身なりに真剣に考えるようになるだろうし、少なくとも交通違反が警察官に見つかり運が悪かったなどと考えることはなくなるだろうと考えました。

 今後も依頼者さんと打合せを重ね、依頼者さんから二度と交通違反をしないようにすることについて真剣に考えてもらうようにし、弁護人としても、自信をもって、依頼者さんが二度と交通違反を繰り返すことがないことをアピールできるように準備をしたいです。

 大阪で刑事事件について弁護士をお探しの方は、こちらをご覧ください。

犯罪被害者等給付金の制度

カテゴリ: その他

 現在、犯罪被害者等給付金の請求を準備しているところです。

 犯罪によって被害を受けた場合、極端な例だと亡くなられた場合、犯罪被害者やそのご遺族は、本来、加害者から被害弁償を受けるべきものです。

 しかしながら、加害者に財産がないために被害回復が十分にできない場合や、加害者の財産が発見困難であり差し押さえができない場合などがあり、加害者から十分な被害弁償を受けることができない場合があります。

 また、犯罪被害者は治療を受け、仕事を休業するなどして、収入が減る一方で支出が増え、予想外に経済的負担を強いられることになります。

 ご遺族も同様に、亡くなられた犯罪被害者が一家の大黒柱であった場合には、その経済的な損失は甚大なものになります。

 そこで、国が、加害者に成り代わり、犯罪被害者やそのご遺族に対して、一時金を支給する制度として、犯罪被害者等給付金の制度があります。

 犯罪被害者等給付金には、重傷病給付金、障害給付金及び遺族給付金の3種類があります。

 重傷病給付金は、一定以上の重い傷害や疾病を負った犯罪被害者に対し、医療費や休業損害を考慮して算出した額を支給するものです。

 障害給付金は、傷害又は疾病が治った時に障害が残った犯罪被害者に対し、その障害の程度に応じて算出した額を支給するものです。

 遺族給付金は、犯罪被害者のご遺族に対し、犯罪被害者の収入と、その収入によって生計を維持していたご遺族の人数に応じて算出した額を支給するものです。

犯罪被害者等給付金は、犯罪被害者の住所地を管轄する都道府県の公安委員会に申請し、その裁定により支給を受けることになっています。

 例えば、犯罪被害者が大阪府内に住んでいれば大阪府公安委員会(実際の窓口は大阪府警察本部になります。)に申請して、その裁定により支給を受けることになります。

 大阪府の場合、申請から裁定までの期間として、概ね半年程度を要しているようです(以上につき、大阪弁護士会犯罪被害者支援委員会編・犯罪被害者支援マニュアル参照)。

 令和3年度に、全国で犯罪被害者等給付金の支給を受けた犯罪被害者は288人、総額は約10億888万円でした(令和4年版犯罪白書参照)。

 このように、犯罪被害者等給付金の制度は、全国的にもそれほど多くは利用されているとは言い難い制度ではありますが、給付金の支給を受けることにより、犯罪被害者やそのご遺族のご負担が少しでも緩和されるように活用されればと思い、私も請求の準備をしているところです。

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