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在宅事件のご相談
おかげさまで、大阪で弁護士になってから、刑事事件についてのご相談を受ける機会があります。
ご相談の内容は、警察に呼ばれたり捕まったりしていないが、自分のしたことが犯罪に当たるかどうか気になるというものや、知り合いが警察に捕まってしまったがどうしたらよいかというもののほか、自身が警察に呼ばれて取調べを受け、身柄拘束されずに帰されたが、今後どうしたらよいかというものもあります。
事件の被疑者が警察に呼ばれて取調べを受けたが身柄拘束されていないものは、在宅事件と呼ばれます。
一方、被疑者が逮捕され、身柄拘束された事件のことは身柄事件と呼ばれます。
刑事訴訟法によれば、身柄事件では、被疑者は逮捕される際、被疑事実の要旨が記載された逮捕状を示されます。
また、勾留された際に出された勾留状にも被疑事実の要旨が記載されますので、弁護士は、逮捕状に記載された被疑事実を被疑者に確認したり、勾留状の謄本を入手して被疑事実を確認したりして、事件の内容を把握することになります。
一方、在宅事件では、逮捕状も勾留状もありません。
ですので、弁護士は、事件の内容を被疑者の話す内容から判断することが必要になります。
例えば、被疑者が話す事件に至る経緯や事件の経過を聴くことによって、被疑者が事件の内容についてどのようにとらえているかがわかります。
また、私の前職が検察官だったこともあり、被疑者から、警察からどのような質問を受けたか、差押えを受けたものはあるか、警察官と一緒に現場や関係場所に行ったかなど、警察に呼ばれて取調べを受けたときに体験した内容を聴くことで、警察がその事件をどのようにとらえているか、その事件の捜査がどの程度まで進んでいるかなどがわかります。
さらに、私の前職が検察官だったこともあり、先ほどまでお話しした事情のほか、被疑者の前科前歴関係や家族、仕事等の、被疑者の身上関係等も確認することで、被疑者が受けるだろう刑事処分も、ある程度予想することができます。
弁護士は、被疑者からご相談を受けた際は、被疑者からそれらの事情をよく聞いた上、事件の概要や今後予想される捜査の流れ、被疑者が受けるだろう刑事処分等について判断します。
それを踏まえて、弁護士は、警察官や検察官による取調べの対応、被害者との示談など、今後起こりうることについて広くアドバイスをします。
また、その中でご依頼を受けることになれば、弁護人に就任し、被疑者のために弁護活動を開始することになります。
ご自身はもちろん、身の回りで、警察に呼ばれて取調べを受けて、今後どうなるのか、どうすればよいのかなどと不安を感じられている方がおられたら、一度、弁護士へご相談されることをおすすめします。
飲酒による交通事故の刑事責任
飲酒した後で自動車を運転して人身事故を起こした場合、従来は、酒気帯び運転という道路交通法違反のほか、業務上過失致死傷、その後改正されて現在は過失運転致死傷の刑事責任に問われていました。
しかし、飲酒による人身事故が悪質な犯罪であるという社会的な認識の高まりもあって、ここ最近、刑法や道路交通法の法改正が相次いでおり、現在はより重い危険運転致死傷罪に問われる可能性もあります。
危険運転致死傷罪は、故意に危険な運転行為を行った結果として人を死傷させた行為について、暴行により人を死傷させる傷害罪や傷害致死罪に準じ、故意犯として処罰するものです。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条1号は、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」によって人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処すると、危険運転致死傷罪を規定しており、法定刑については、過失運転致死傷(7年以下の懲役、禁錮又は100万円以下の罰金)と比較して相当重くなっています。
「アルコール…の影響により正常な運転が困難な状態」というのは、酒類の影響により、道路及び交通状況等に応じた的確な運転操作を行うことが困難な心身の状態をいいます。
例えば、飲酒した影響で、思ったとおりにハンドルやブレーキ等を操作することや、前方を注視してそこにある危険を的確に把握し対処することが、現に困難な状態が、そのような状態に当たるとされています。
また、同法3条1項は、危険運転致死傷罪の別類型として、「アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障を生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する」と規定しており、法定刑についても、過失運転致死傷と比較して相当重くなっています。
「アルコール…の影響により、その走行中に正常な運転に支障を生じるおそれがある状態」とは、酒類の影響により、自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力又は操作能力が相当程度減退している状態、あるいは、そのような状態になり得る具体的なおそれがある状態をいいます。
例えば、道路交通法の酒気帯び運転に該当する程度のアルコールを身体に保有している状態であれば、通常はそのような状態に当たるとされています。
また、同法3条1項の危険運転致死傷罪の故意として、「アルコール…の影響により、その走行中に正常な運転に支障を生じるおそれがある状態で、自動車を運転」することの認識が必要とされています。
すなわち、身体にアルコール等を保有していることの認識と、その影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態にあることの認識を要し、かつ、それで足りるとされています。
具体的には、客観的に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態にあったと認められる限り、酒気帯び運転に該当する程度のアルコール等を身体に保有していることを認識していれば、危険運転致死傷罪の故意を認めることに十分であるとされています。
そうすると、道路交通法の酒気帯び運転に該当する程度のアルコールを身体に保有している状態で、その状態にあることを認識して自動車を運転した場合、すなわち、それなりに飲酒した後で自動車を運転した場合、人身事故を起こすと、法定刑が相当重い、同法3条1項の危険運転致死傷罪によって処罰される可能性があるということになります。
どのような犯罪が成立するにしても、飲酒して自動車を運転し、人身事故を起こすことは処罰の対象になります。
自分は人身事故を起こすわけがないと信じていたとしても、自動車の飲酒運転は絶対にしないようにしましょう。
また、もし自動車の飲酒運転をして人身事故を起こした場合、重い刑罰を受ける可能性があるほか、民事の損害賠償の問題にもなりますので、早めにお近くの弁護士にご相談されることをおすすめします。
性犯罪関係の刑法等の改正について
令和5年の通常国会で、性犯罪に関する刑法その他の法律が改正され、令和5年7月13日から施行されていることは、報道もされており、ご存じの方もいらっしゃると思います。
法務省がホームページで改正法の概要等を説明していますので、その内容を簡単に説明しますと、これまで強制性交等罪や強制わいせつ罪と規定されていたものが不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に名前が変わりました。
また、それぞれの構成要件についても、これまで規定されていた
① 暴行又は脅迫 に加えて、
② 心身の障害
③ アルコール又は薬物の影響
④ 睡眠その他意識不明瞭な状態
⑤ 性的行為がされようとしていることに気づいてから、性的行為がされるまでの間に、その性的行為について自由な意思決定をするための時間にゆとりがない場合
⑥ 予想と異なる事態との直面に起因した恐怖や驚愕
⑦ 虐待による無力感や恐怖心などの心理的反応
⑧ 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮
のいずれかを原因として、性的行為に同意しない意思を形成し、表明し又はその意思どおりにすることを困難な状態にさせ、あるいは相手がそのような状態にあることに乗じて、性交等やわいせつな行為に及んだ場合、婚姻関係の有無にかかわらず処罰の対象になり、処罰の対象がより明確になりました。
また、わいせつな行為ではないと誤信させるほか、人違いをさせること、又は相手がそのような誤信をしていることに乗じて性交等やわいせつな行為に及んだ場合も処罰の対象となり、その面でも処罰の対象がより明確になりました。
そして、先ほどの構成要件に当てはまらない場合でも、相手が13歳未満である場合や、相手が13歳以上16歳未満であって行為者が5年以上年長である場合、性交等やわいせつな行為に及ぶと処罰の対象になります。
なお、公訴時効についても改正されており、不同意性交等致傷罪の他、不同意性交等罪、不同意わいせつ罪の公訴時効が改正前から5年ずつ延長され、それぞれ20年、15年、12年になりました。
また、被害者が18歳未満である場合は、被害者が18歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間が公訴時効期間とされます。
例えば、当時10歳の被害者が不同意性交等の被害に遭った場合、公訴時効の完成は、不同意性交等罪の15年に、被害者が18歳になるまでの8年間が上乗せされることになるので、公訴時効は被害者が33歳に達する日まで完成しないことになります。
ところで、これまで他人の下着姿を盗撮した場合、大阪府ならば大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例、他の都道府県でもいわゆる迷惑防止条例が適用されていました。
また、18歳未満の児童に対する盗撮の場合、児童買春等処罰法が規定するひそかに児童ポルノを製造する罪等が適用されていました。
しかし、迷惑防止条例は都道府県ごとに規定が異なる上、児童ポルノ製造罪の保護の対象も18歳未満の児童に限定されており、これらの条例や法律が適用されない盗撮の事例もあり得ます。
そこで、今回、これまで適用されなかった事例も含め、盗撮行為やそれに関連する行為を処罰するため、性的姿態撮影等処罰法が制定されました。
この法律では、
① 他人の性的な姿を盗撮するなど、一定の態様、方法で撮影する行為
② ①の撮影行為により生まれた記録の提供や公然陳列
③ ①の撮影行為により生まれた記録の、提供や公然陳列目的での保管
④ 他人の性的な姿を、一定の態様、方法で、ライブストリーミングによる不特定、多数の者への影像の配信
⑤ ④の配信行為により送信された影像の記録
を処罰対象としています。
今回の刑法等の改正は、性犯罪に関して新たな規定が定められるなどしており、実務的にも影響が大きいと思われます。
また、今後もさらなる法改正が予想されるところでもあり、引き続き動向を追っていきたいと考えています。
交通違反事件の弁護活動
自動車の交通違反事件の公判弁護を受任することになり、現在、被告人となった依頼者さんと打合せをしているところです。
自動車の交通違反といえば、主に速度違反、無免許運転、酒気帯び運転、無車検・無保険車の運転等が挙げられますが、その際に人身事故を起こさない限りは、被害者に当たる人がいない犯罪ではあります。
だからといって、弁護人が何も弁護活動をしないかといえばそうではありません。
自動車の交通違反で公判請求を受ける場合というのは、それ以前にも自動車を運転して交通違反を繰り返し、略式命令を受けていたような場合もままあります。
ですので、弁護人の立場からすると、被告人が、今後は二度と速度違反や無免許運転のような交通違反を繰り返さないことを、裁判所に対して積極的にアピールすることが必要になります。
例えば、被告人質問で、被告人に今後は二度と自動車を運転しないことを誓約してもらうこと、被告人が自動車を所有していたらその自動車を業者に買い取ってもらうこと、被告人の家族に証人として出廷してもらい、自動車のエンジンキーを厳重に管理して、被告人に二度と自動車を運転させないことを約束してもらうことなど、今後、被告人が二度と交通違反をしないための実効的な対策を立てていることをアピールする必要があります。
その反面、被告人自身が、交通違反をしているときに偶然に警察官に見つかっただけで運が悪かった、今後交通違反を起こしてもそれほど警察官には見つからないだろう、周りも交通違反をしているのに自分だけ裁判を受けなければならないのはなぜか、弁護人や検察官、裁判官や警察官に話を合わせてやり過ごしておこうなどと考えていれば、二度と交通違反を起こさないと言っても、被告人の姿勢が疑われるでしょう。
また、被告人がそのような姿勢だと、弁護人としても、被告人が二度と交通違反を繰り返すことはない、と自信をもってアピールすることができなくなります。
そこで、私は、打合せの時、依頼者さんに対して、二度と交通違反を起こさないことを真剣に考えてもらうため、そもそも交通ルールが法律で定められている理由について、ご自身の言葉で考えてもらうことにしました。
依頼者さんに自分の言葉で答えることができるようになってもらえれば、今後は交通ルールを守って交通違反をしないようにしようと、ご自身なりに真剣に考えるようになるだろうし、少なくとも交通違反が警察官に見つかり運が悪かったなどと考えることはなくなるだろうと考えました。
今後も依頼者さんと打合せを重ね、依頼者さんから二度と交通違反をしないようにすることについて真剣に考えてもらうようにし、弁護人としても、自信をもって、依頼者さんが二度と交通違反を繰り返すことがないことをアピールできるように準備をしたいです。
犯罪被害者等給付金の制度
現在、犯罪被害者等給付金の請求を準備しているところです。
犯罪によって被害を受けた場合、極端な例だと亡くなられた場合、犯罪被害者やそのご遺族は、本来、加害者から被害弁償を受けるべきものです。
しかしながら、加害者に財産がないために被害回復が十分にできない場合や、加害者の財産が発見困難であり差し押さえができない場合などがあり、加害者から十分な被害弁償を受けることができない場合があります。
また、犯罪被害者は治療を受け、仕事を休業するなどして、収入が減る一方で支出が増え、予想外に経済的負担を強いられることになります。
ご遺族も同様に、亡くなられた犯罪被害者が一家の大黒柱であった場合には、その経済的な損失は甚大なものになります。
そこで、国が、加害者に成り代わり、犯罪被害者やそのご遺族に対して、一時金を支給する制度として、犯罪被害者等給付金の制度があります。
犯罪被害者等給付金には、重傷病給付金、障害給付金及び遺族給付金の3種類があります。
重傷病給付金は、一定以上の重い傷害や疾病を負った犯罪被害者に対し、医療費や休業損害を考慮して算出した額を支給するものです。
障害給付金は、傷害又は疾病が治った時に障害が残った犯罪被害者に対し、その障害の程度に応じて算出した額を支給するものです。
遺族給付金は、犯罪被害者のご遺族に対し、犯罪被害者の収入と、その収入によって生計を維持していたご遺族の人数に応じて算出した額を支給するものです。
犯罪被害者等給付金は、犯罪被害者の住所地を管轄する都道府県の公安委員会に申請し、その裁定により支給を受けることになっています。
例えば、犯罪被害者が大阪府内に住んでいれば大阪府公安委員会(実際の窓口は大阪府警察本部になります。)に申請して、その裁定により支給を受けることになります。
大阪府の場合、申請から裁定までの期間として、概ね半年程度を要しているようです(以上につき、大阪弁護士会犯罪被害者支援委員会編・犯罪被害者支援マニュアル参照)。
令和3年度に、全国で犯罪被害者等給付金の支給を受けた犯罪被害者は288人、総額は約10億888万円でした(令和4年版犯罪白書参照)。
このように、犯罪被害者等給付金の制度は、全国的にもそれほど多くは利用されているとは言い難い制度ではありますが、給付金の支給を受けることにより、犯罪被害者やそのご遺族のご負担が少しでも緩和されるように活用されればと思い、私も請求の準備をしているところです。
ご挨拶
この4月から弁護士として勤務しています。
この3月までは、検察官として大阪や各地の検察庁で勤務していました。
ですので、刑事事件の手続には、この3月までと逆の、検察官と相対する立場で関わることになります。
刑事事件の手続では、検察官と弁護人が法廷で対立して火花を散らすようなイメージを持っておられる方も多いと思います。
実際に、私も検察官として、法廷で、被告人が有罪か無罪かについて、弁護人と互いの主張をぶつけ合ったことが何回もありました。
もっとも、検察官だった時がいつもそうだったわけではありませんでした。
被疑者や被告人の弁護人が示談交渉をする際に被害者に示談交渉を勧めたことは何回もありました。
また、被疑者の弁護人との間で、今後の被疑者の更生のためにどのような処分が適切かを議論したこともありました。
一方、家族にも被害に遭ったことを話すことができずにいた被害者には、被害者代理人の弁護士をつけてもらい、その弁護士には最後まで被害者に付き添ってもらったこともありました。
また、性被害に遭った被害者に対して、代理人の弁護士と一緒になって、裁判所で意見を述べることができるように準備したこともありました。
個人的には、検察官であっても弁護士であっても、基本的人権を保障することをはじめとして、依って立つ刑事手続の基本的な理念や方向性にはそれほどの違いはないのだろうと思います。
この4月から弁護士として刑事手続に関わることができる立場になりましたが、これからも、検察官と互いに主張をぶつけ合うことだけでなく、被害者に必要な保護を講じることや、被疑者、被告人が再犯を繰り返さないように更生させること等も含んだ、広い意味での刑事手続に携わっていきたいと考えています。
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