大阪で弁護士として相談を受けた刑事事件において、変わった事件がありました。
内容を抽象化してお話しすると、加害者が被害者の使うコップにあらかじめ洗剤を入
・・・(続きはこちら) 大阪で弁護士として相談を受けた刑事事件において、変わった事件がありました。
内容を抽象化してお話しすると、加害者が被害者の使うコップにあらかじめ洗剤を入れて、被害者が使うときにその洗剤を飲ませるというものでした。
もし、洗剤を飲んだ被害者が何らかの症状を訴えることがあれば、加害者にはどのような罪責が問われることになるでしょうか。
この点、傷害罪において傷害を生じさせる方法は、暴行、すなわち、人の身体に対する有形力の行使によるのが通例ですが、法律では傷害の方法について制限していません。
ですので、暴行を手段とする場合に限らず、無形的方法による傷害も認められます。
例えば、無言電話等により人に恐怖させて精神衰弱に陥らせる、病原菌を食品に添加して食べさせたり治療と称して注射又は経口投与したりして病気に罹患させる、社会的に許容された量を超えた飲酒をさせて急性アルコール中毒による心肺停止に陥らせる、睡眠薬を摂取させて数時間にわたり意識障害を伴う急性薬物中毒症状を生じさせるなどといった場合、無形的行為による傷害罪が成立する可能性があります。
それでは、傷害の結果が生じなかった場合はどうなるでしょうか。
傷害の結果が生じなければ暴行罪になるのではないか、と考えられます。
ただ、先ほど述べたとおり、暴行とは、人の身体に対する有形力の行使を言います。
例えば、物理的すなわち力学的作用のほか、音響、光、電気、熱等のエネルギーの作用を人に及ぼすことも有形力の行使に当たるとされています。
相手の身近で殊更に太鼓を連打したり、拡声器を使って相手の耳元で大声を出したりする行為などは、人の身体に対する有形力の行使に当たるといえそうです。
しかし、先ほど例として挙げたような、無言電話、病原菌の感染、睡眠薬やアルコールの摂取などが人の身体に対する有形力の行使にあたるかどうかについては、学説が分かれています。
そうすると、無形的方法による暴行罪が成立するかどうかはっきりしない場合もありそうです。