弁護士として大阪で執務している際、不作為犯の成否について検討する機会がありました。
不作為犯について検討するのは司法試験の勉強をしていた時以来であり、実務
・・・(続きはこちら) 弁護士として大阪で執務している際、不作為犯の成否について検討する機会がありました。
不作為犯について検討するのは司法試験の勉強をしていた時以来であり、実務で不作為犯の成否について検討したのは初めてでした。
ここで不作為犯について説明すると、不作為犯とは、構成要件上、不作為の形式で規定されている真正不作為犯と、作為の形式で規定された構成要件を不作為で実現させる不真正不作為犯とに分けられます。
真正不作為犯として、刑法は、多衆不解散罪(107条)、不退去罪(130条)、不保護罪(218条1項)をそれぞれ規定しています。
不真正不作為犯は、裁判例では、殺人罪や保護責任者遺棄罪、現住建造物放火罪等で認定されています。
不真正不作為犯については、不作為を処罰しようとするとなんでもありになりかねないので、どの程度の不作為を処罰することができるのかが問題になっており、それに対する様々な理論上の説明が試みられています。
主要な考え方としては、作為犯と同価値であること、すなわち、作為犯の実行行為と同視できる程度の不作為であれば、作為犯と同様に不作為犯も処罰することができる、という考え方から、法律上の作為義務がある人の不作為に限り、不作為犯として処罰する、というものがあります。
そして、どのような場合に法律上の作為義務があるのか、についても様々な考え方があり、一つの考え方として、結果発生の現実的危険が生じること、結果防止が可能であること、社会通念上の依存関係が認められること、結果発生防止のための作為が可能であることが要件として挙げられています。
また、社会通念上の依存関係が認められる場合として、たとえば、親子や雇用関係、不動産の所有者や管理者等が挙げられます。
そうすると、不真正不作為犯が成立する場合はごく限定された場合にとどまり、たとえば、親がおぼれている子どもを容易に救助できるのにそのまま放置して、子どもがおぼれ死ぬような場合や、過失で家に火がついたのに気づき、容易に消火できたのにそのまま放置して、家が全焼してしまうような場合にとどまることになります。