飲酒による交通事故の刑事責任

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 飲酒した後で自動車を運転して人身事故を起こした場合、従来は、酒気帯び運転という道路交通法違反のほか、業務上過失致死傷、その後改正されて現在は過失運転致死傷の刑事責任に問われていました。

 しかし、飲酒による人身事故が悪質な犯罪であるという社会的な認識の高まりもあって、ここ最近、刑法や道路交通法の法改正が相次いでおり、現在はより重い危険運転致死傷罪に問われる可能性もあります。

 危険運転致死傷罪は、故意に危険な運転行為を行った結果として人を死傷させた行為について、暴行により人を死傷させる傷害罪や傷害致死罪に準じ、故意犯として処罰するものです。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条1号は、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」によって人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処すると、危険運転致死傷罪を規定しており、法定刑については、過失運転致死傷(7年以下の懲役、禁錮又は100万円以下の罰金)と比較して相当重くなっています。

  「アルコール…の影響により正常な運転が困難な状態」というのは、酒類の影響により、道路及び交通状況等に応じた的確な運転操作を行うことが困難な心身の状態をいいます。

例えば、飲酒した影響で、思ったとおりにハンドルやブレーキ等を操作することや、前方を注視してそこにある危険を的確に把握し対処することが、現に困難な状態が、そのような状態に当たるとされています。

 また、同法3条1項は、危険運転致死傷罪の別類型として、「アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障を生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する」と規定しており、法定刑についても、過失運転致死傷と比較して相当重くなっています。

 「アルコール…の影響により、その走行中に正常な運転に支障を生じるおそれがある状態」とは、酒類の影響により、自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力又は操作能力が相当程度減退している状態、あるいは、そのような状態になり得る具体的なおそれがある状態をいいます。

 例えば、道路交通法の酒気帯び運転に該当する程度のアルコールを身体に保有している状態であれば、通常はそのような状態に当たるとされています。

 また、同法3条1項の危険運転致死傷罪の故意として、「アルコール…の影響により、その走行中に正常な運転に支障を生じるおそれがある状態で、自動車を運転」することの認識が必要とされています。

 すなわち、身体にアルコール等を保有していることの認識と、その影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態にあることの認識を要し、かつ、それで足りるとされています。

 具体的には、客観的に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態にあったと認められる限り、酒気帯び運転に該当する程度のアルコール等を身体に保有していることを認識していれば、危険運転致死傷罪の故意を認めることに十分であるとされています。

 そうすると、道路交通法の酒気帯び運転に該当する程度のアルコールを身体に保有している状態で、その状態にあることを認識して自動車を運転した場合、すなわち、それなりに飲酒した後で自動車を運転した場合、人身事故を起こすと、法定刑が相当重い、同法3条1項の危険運転致死傷罪によって処罰される可能性があるということになります。

 どのような犯罪が成立するにしても、飲酒して自動車を運転し、人身事故を起こすことは処罰の対象になります。

 自分は人身事故を起こすわけがないと信じていたとしても、自動車の飲酒運転は絶対にしないようにしましょう。

 また、もし自動車の飲酒運転をして人身事故を起こした場合、重い刑罰を受ける可能性があるほか、民事の損害賠償の問題にもなりますので、早めにお近くの弁護士にご相談されることをおすすめします。

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