教師による体罰と懲戒

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 ここ最近、弁護士が学校内で起こる様々な問題を解決するため、スクールロイヤー制度が設けられるところが増えてきています。

 大阪府でも大阪弁護士会と連携してスクールロイヤー制度が導入されており、子どもに関する問題に詳しい大阪弁護士会所属の弁護士が、スクールロイヤーとして登録されているとのことです。

 ところで、学校内で起こる問題の一つとして、教師による児童・生徒に対する体罰の問題があります。

 学校教育法11条は、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、…児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えてはならない。」と規定して、教師による懲戒を認める一方、体罰を禁止しています。

 文部科学省は、平成25年3月13日付けで「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」という通知を発しています。

 同通知は、体罰について、児童・生徒の心身に深刻な悪影響を与え、教員等及び学校への信頼を失墜させる行為であること、体罰により正常な倫理観を養うことはできず、むしろ児童・生徒に力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為などの連鎖を生むおそれがあることを挙げて、児童・生徒への指導に当たり、いかなる場合も体罰を行ってはならない、としています。

 一方、学校教育法11条は、教師が懲戒を加えることを認めています。

 そこで、懲戒と体罰との区別が問題となります。

 この点、文部科学省は、前記通知等により、教師が児童・生徒に対して行った懲戒行為が体罰に当たるかどうかは、児童・生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考えて、個々の事案ごとに判断する必要があるとしています。

 その上で、①殴る、蹴る、突き飛ばす、物を投げつけるなど、身体に対する侵害を内容とするもののほか、②長時間にわたり正座させる、別室に留め置いてトイレに出ることも許さないなど、児童・生徒に肉体的苦痛を与えるようなものに当たるものについて、体罰に当たるとしています。

 他方、文部科学省は、放課後に教室に居残りさせる、授業中に教室内で起立させる、課題や清掃活動を課す、当番を多く割り当てる、立ち歩きの多い児童生徒を叱って着席させる、練習に遅刻した生徒を試合に出さずに見学させるなどの行為は、肉体的苦痛を伴わない限り、懲戒として認められるとしています。

 そうすると、教師が児童・生徒に対して殴る、蹴る、長時間にわたり正座させる、別室に留め置いて外に出さない行為等について、学校教育法で禁止されている体罰に当たるうることになります。

 そのような体罰に当たりうる行為は、傷害罪や暴行罪、監禁罪等の構成要件に該当しますので、教師には刑事責任が問われる可能性があります。

 もっとも、教師が児童・生徒に対してそのような体罰に当たりうる行為を加えたとしても、場合によっては教師に刑事責任が問われない可能性があります。

 例えば、児童・生徒が教師の指導に反抗して教師の足を蹴ってきたので、教師がその背後に回ってその身体をきつく押さえた場合のように、教師が防衛のためにしてやむを得ずしたような場合には、正当防衛が認められ、教師は刑事責任を免れる可能性があります。

 また、他の児童・生徒を押さえつけて殴っていた児童・生徒の身体をつかんで引き離した場合のように、他の児童・生徒に対する暴力行為を制止するような場合にも、正当防衛や正当行為が認められ、教師は刑事責任を免れる可能性があります。

 文部科学省も、前記通知により、先ほど挙げたような場合には体罰に当たらず、正当防衛又は正当行為として刑事責任を免れうるとしています。

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