刑事事件の示談において被害者側が提示する条件

 ようやく少し涼しくなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。  今月は、大阪や京都、神戸にある当事務所の弁護士事務所で、刑事事件の示談についてのご相談をお受けすることがありました。  ところで、刑事事件の示談において、被害者側が提示する条件は、金銭的な賠償だけでなく、精神的な被害回復や再犯防止のための行動制限など多岐にわたります。  被害者側は事件によって受けた苦痛や将来への不安を解消するために、法的に許容される範囲で様々な条件を付けることが可能です。 1 金銭的な賠償(示談金・解決金)   最も基本的な条件です。   精神的苦痛に対する慰謝料や、治療費、休業損害、物の修理代などの実損害の補填等があります。   一括払いが原則とされることが多いですが、加害者の経済状況によっては分割払いや、保証人を立てることを条件  にするケースもあります。 2 行動の制限・接触禁止(再犯防止・安全確保)   被害者が今後の生活で恐怖や不安を感じないようにするための条件です。   被害者本人やその家族に対して、直接面会すること、電話・メール・SNS等で連絡を取ることのほか、被害者の自  宅、職場、通学路の周辺(半径〇メートル以内など)等に立ち入らないことを約束させます。   また、事件の性質(ストーカーや近隣トラブル、職場内の性犯罪など)によっては、加害者に対して「引っ越し」  「退職・異動」を絶対条件とする場合があります。 3 反省と社会的制裁(宥恕の度合い)   加害者がどのように反省を示し、被害者がそれをどう受け止めるかに関する条件です。   加害者本人が直筆で書いた反省文や謝罪文の提出を求めるほか、「加害者を許す」という文言(宥恕条項)を示談  書に入れない、または「厳重な処罰を求める」という意思を維持したまま、金銭賠償のみ合意するという条件にする  場合があります。 4 秘密保持   事件や示談の内容が第三者に漏洩することを防ぐための条件です。   事件の内容や示談が成立した事実、示談金の額などを、正当な理由なくSNSに投稿したり第三者に口外したりするこ   とを禁止するほか、違反した場合の違約金(ペナルティ)を定めることもあります。  なお、被害者側は自由に条件を提示できますが、「公序良俗に反する内容」や「実現が不可能な過大な要求」(たとえば、一生奴隷のように働く、法外すぎる賠償金、不当な人権侵害にあたる要求など)は、示談が法的に無効となるか、加害者側が応じられずに交渉が決裂する原因になります。  そのため、弁護士を介して法的・実務的に有効な範囲で文言を調整するのが一般的です。

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